多くの人が抱くイメージとして、タクシードライバーとして働くには、タクシー会社に正社員として入社しなければならないという考えがあるようです。運転のプロであり、専門の資格も必要なことから、アルバイトで働くのは不可能と、つい考えてしまいがちです。しかし実際には、アルバイトのタクシードライバーという働き方には、門戸が開かれています。
そもそもタクシー業界は慢性的な人手不足に悩まされており、近年ではますますその傾向が顕著になっています。そうした状況の打開策として、タクシー会社のなかには、アルバイトでタクシードライバーとして働くことを解禁している所も見られるようになってきているのです。ただし、タクシー会社によっては、アルバイト不可としているところもあります。求人募集において、アルバイトの可否をしっかりチェックしてください。
タクシードライバーという仕事は正社員であれ、アルバイトであれ、お客様から料金を頂いて目的地まで車両にお乗せしてお連れするという仕事内容に変わりはありません。それ故、アルバイトであっても、普通自動車第二種免許が必要であることに変わりはありません。
ちなみにタクシー会社の多くでは、正社員として入社する場合、二種免許の資格取得支援制度が用意されていますが、アルバイトの場合はこの制度の対象外となってしまうことも考えられます。事前に確認しておくべきです。
正社員のタクシードライバーの場合、日勤、夜勤に加え、1日16時間以上勤務して翌日は休養日となる隔日勤務という勤務体系があります。もちろんある程度は希望を汲んでもらえますが、正社員として働く場合は、どうしても拘束時間は長くなってしまうのは否めません。
対してアルバイトであれば、本人の希望を優先できる裁量の範囲が多くなります。会社との話し合いにより、「一日〇〇時間」や「〇〇時から〇〇時まで」といった働き方も可能。育児や介護などの事情がある方でも、タクシードライバーとして働くことが可能となります。
正社員のタクシードライバーならではの給与システムとして「歩合制」というものがあります。そのドライバーが獲得した売上全体のうち、所定の割合額が給与となるという方式であり、腕のよいドライバーほど、給与額も増えていくというもの。また正社員であれば都道府県で定められた最低賃金が保証されますので、売上が芳しくなくても最低限の収入は確保できます。
一方でアルバイトの場合は、他の職種や業種の場合と同じく、1時間あたりの報酬として時給が支払われる方式となります。タクシードライバーの時給は、コンビニエンスストアや飲食店などよりは少し高めという傾向となっています。
一部の特殊な雇用契約の場合は例外として、正社員として働く社員には、厚生年金や健康保険などの社会保険制度が完備されています。また会社によって内容に違いはありますが、退職金制度や保養所優待などの福利厚生制度が用意されています。
対してアルバイトとして働く場合は、これらの社会保険や福利厚生制度は対象外となってしまう場合がほとんど。ただし近年では、アルバイトに対しても一定の福利厚生制度を適用するというケースも出てきています。求人募集などで、確認してみてください。
アルバイトでタクシードライバーを行うメリットは何と言っても、勤務時間や働く頻度を、ある程度自分の裁量で決められるという点。育児や介護などの事情を抱えているという場合にはまさにうってつけと言えるでしょう。また定年退職後に無理のない範囲で働きたいという場合なども同様です。
一方で、収入面や社会保障などの待遇面においては、正社員には及ばないというのがデメリットと言えます。積極的に収入を増やしたいという場合には、アルバイトではなく、正社員として働く方が賢明と言えます。
例えば既に正社員として働いていてなおかつWワークが認められているという場合や、自営業を行っていて空いた時間を有効に活用したいといった場合には、勤務時間や出勤頻度に裁量が認められているアルバイトでタクシードライバーを行うのに向いていると言えるでしょう。またアルバイトであれば、土日や休日のみタクシードライバーを行うということも不可能ではありません。
先にも触れました通り、タクシー業界は慢性的な人手不足に悩まされていますが、とりわけ地方の観光地では、その傾向がより顕著となっています。そこで狙い目なのが、観光シーズンなどの繁忙期は観光地のタクシードライバーとして働き、オフシーズンは他の地域で別の仕事を行うというスタイル。通年地方で働くのは厳しくても、この方法であれば一定の収入が見込めるのではないでしょうか。